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防寒対策のカバーをつけたジャージー牛
 ニュージーランドは草地を家畜の生産基盤とする世界でも有数の畜産国です。
 しかし現在のような草地生産技術が成立したのはここ80年の動きで、長い歴史の中で培われたものではありません。乾草調整技術が急速に発展したのは1927年頃、ペレニアルライグラス、ホワイトクローバーの種子が出現したのは1930年、飛行機による肥料の散布がなされ始めたのが1946年からで、放牧による草地の集約的な利用を可能にした電気牧柵が開発されたのは1950年でした。
 にもかかわらず、ニュージーランドでこれほど放牧酪農が盛んになった最大の要因はその温暖な気候です。温暖な気候が年間を通じて牧草を生長させ、冬季でも牛や羊などを舎飼いする必要がありません。
 ニュージーランドの乳牛の飼育頭数は2002年は370万頭、生産量は前年比約5%増の1390万トン。乳牛の品種はホルスタイン種が半数強を占め、ジャージー種が2割弱、ジャージー種とホルスタイン種の交配種がジャージー種とほぼ同数ではないかと推測されます。
 乳量の多いホルスタイン種が年々頭数を増やす傾向にある中で、広々とした草地が似合い、乳房炎にも強く耐用年数も長いジャージー種を愛する農家も、どっしりとニュージーランドの大地に根を下ろしています。

経産牛頭数と生乳処理量の推移
資料:家畜改良公社「Dairy」
生乳の月別処理量
資料:NZDB「Dairy Statistics」
生乳及び乳製品生産量 の推移
資料:NZDB「Dairy Statistics」
「Dairy Statistics Statistics」
「SONZAF」
※注1:年度は6〜5月。※注2:経産牛頭数は年度当初、生乳生産量には自家消費を含む。※注3:バターには、無水バターなどをバター換算して算入。

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 ニュージーランドの酪農は、草の育成ステージに搾乳サイクルを同調させています。
 1年中牛舎内で飼育し、粗飼料(繊維質の飼料)と濃厚飼料(大豆の絞りかすなど)を与える酪農方式を見慣れている私たちにとって、ニュージーランドにおける畜産業のスタイルは私たちの常識を覆すものです。
 1年中草地で乳牛を放し飼い、乳を搾るときにだけ搾乳舎に入れます。子牛を産むときも草地がベッドになります。分娩時期も牧草の栄養価が優れている春先にあわせ、牧草の生産性の低下する秋の後半に乾乳期に入ります。
 濃厚飼料を与える農家はほとんどいません。ニュージーランドでは「乳は草地から」が大前提で、屋外の草地が屋根のない牛舎であり、濃厚飼料の役割を草地が担うのです。
 従って、乳生産は季節によってその量が大きく変動します。真冬の6月から7月には生乳の生産は限りなくゼロに近く、8月から急激に増加し、10月〜11月がピーク。その後次第に減少します。9月から2月の6ヶ月間で年間生産の8割弱を生産します。
 この自然の摂理にかなった搾乳サイクルがニュージーランドで成り立つのは、生産量の95%が加工に向けられるからです。「量は少なくとも濃い」乳の方が扱いやすく、濃い乳が得られるジャージー種が歴史的に重用されてきた理由がここにあります。

 世界でも類のない草地農業国ニュージーランドにも最近大きな暗雲が垂れ込めています。
 牛や羊などの反芻胃からげっぷとして吐き出されるメタンガスに掛けようとしている、いわゆる「げっぷ」税です。
 農場にいる反芻動物の種類と数に対し、排出されるメタンガスによる環境問題を解決するために必要な研究費や対策費として税金制度が設けられようとしています。
 わが国でも去る11月15日から家畜排泄物法が導入され、環境に悪影響を及ぼさない糞尿処理が生産者に義務づけられました。今や環境との関わりを抜きにした畜産業の存在はあり得ない時代に突入したのです。
 世界中から家畜のエサとなる穀物や魚粉等を2000万トン以上も輸入している日本ですが、食料の移動が環境に与える影響の指標としてフードマイレージを取り上げる例も増えています。
 これは飛行機や船で輸送するときに排出される二酸化炭素の量を計算し数値化しようとするもので、いずれその数値が飼料の輸入価格に反映される可能性もあります。


ジャージー島から輸入した種牛。
繁殖も自然交配です。
 放牧による生産体系のため、ニュージーランドの生乳生産コストは世界で最も低い水準にあります。生産量が1390万トンと日本の1.7倍ほどにもかかわらず、生産量の96%を輸出に向ける同国は国際貿易に占める供給量の割合が一国としては最大の29%を占めEUの30%に次ぐ位置にあります。
 かつてニュージーランドデイリーボード(NZDB)が乳製品の一元輸出を行っていた同国は、2001年に2大酪農協とNZDBの販売機構を取り込んだ巨大酪農協(乳業メーカー)フォンラテが誕生し、原材料としての性格が強い、いわゆるバルク商品からの脱却を狙い、全粉乳やチーズの生産拡大が進められています。
 さらに2002年にはネスレSAと南北アメリカ大陸を市場とする合弁企業の設立に同意するなど、世界一低い生産コストを武器に、国際市場への進出を図ろうとしています。
全飼育頭数の0.6%にすぎない希少なジャージー牛自然のままに飼育するニュージーランドの酪農
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